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名古屋地方裁判所 平成6年(ワ)1486号 決定 1996年3月29日

《住所省略》

原告

中川徹

《住所省略》

原告

三浦和平

《住所省略》

原告

早川善樹

《住所省略》

原告

早川彰子

《住所省略》

原告

柴原洋一

《住所省略》

原告

田中良明

《住所省略》

原告

中垣たか子

《住所省略》

原告

小松猛

《住所省略》

原告

増田勝

《住所省略》

原告

小木曽茂子

《住所省略》

原告

天野美枝子

《住所省略》

原告

河田昌東

《住所省略》

原告

大嶽恵子

《住所省略》

原告

大谷早苗

《住所省略》

原告

竹内泰平

《住所省略》

原告

杉本皓子

《住所省略》

原告

小野寺瓔子

《住所省略》

原告

寺町知正

《住所省略》

原告

寺町緑

《住所省略》

原告

大中眞弓

原告ら訴訟代理人弁護士

松葉謙三

斎藤誠

石坂俊雄

新海聡

名嶋聰郎

平井宏和

矢花公平

米山健也

《住所省略》

被告

松永亀三郎

《住所省略》

被告

安部浩平

《住所省略》

被告

太田四郎

《住所省略》

被告

齊藤孝

《住所省略》

被告

新井市彦

《住所省略》

被告

内田敏久

《住所省略》

被告

木村洋一

《住所省略》

被告

殿塚猷一

《住所省略》

被告

山﨑昭平

被告ら訴訟代理人弁護士

片山欽司

井上尚司

名古屋市東区東新町1番地

補助参加申出人

中部電力株式会社

右代表者代表取締役

太田宏次

右代理人弁護士

高橋正藏

奥村軌

原告らと被告ら間の当庁平成6年(ワ)第1486号損害賠償請求事件(以下「本件訴訟」という。)について,補助参加申出人が被告らを補助するため補助参加の申出をし,これに対して原告らが異議を述べたので,当裁判所は,次のとおり決定する。

主文

一  本件補助参加の申出を却下する。

二  本件補助参加申出に対する異議により生じた手続費用は補助参加申出人の負担とする。

理由

一  補助参加申出人の参加の理由は別紙「参加の理由」記載のとおりであり,これに対する原告らの意見は別紙「原告らの意見」記載のとおりである。

二  そこで,補助参加の要件である利害関係の有無について検討する。

1  民訴法64条にいう「訴訟ノ結果ニ付利害関係ヲ有スル」とは,本案判決の主文で示される訴訟物である権利ないし法律関係の存否自体についての判断が補助参加人の法律上の地位に影響を及ぼす場合をいうものと解される。そして,補助参加が許されるのは,本案判決の主文で示される訴訟物についての判断との関係において,補助参加申出人と被参加人が利害を共通にする場合に限られ,主文において被参加人が勝訴した場合に不利な影響を受けるという関係にある者は,当該被参加人を補助するために参加することは許されない。

2  本件訴訟は,被告らが,補助参加申出人の取締役として平成5年12月16日に三重県度会郡南島町の古和浦漁業協同組合(以下「古和浦漁協」という。)に対して2億円を支出したことにより補助参加申出人に損害を与えたと主張して,原告らが,補助参加申出人の株主として,被告らに対し,補助参加申出人のために同社の取締役の責任を追及する株主代表訴訟である。その請求の趣旨は「被告らは,連帯して,補助参加申出人に対して,2億円及びこれに対する平成6年5月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。」というものであり,その訴訟物は,被告らの補助参加申出人に対する善管注意義務違反ないし忠実義務違反に基づく補助参加申出人の被告らに対する損害賠償請求権及びこれについての遅延損害金請求権である。本件訴訟の判決主文において原告ら勝訴の判断が示されこれが確定した場合には,被告らの補助参加申出人に対する損害賠償義務があることが確定し,補助参加申出人にとり有利な結果をもたらす。これに対して,被告ら全部勝訴の判決が確定した場合には,補助参加申出人の被告らに対する損害賠償請求権がないことが確定し,補助参加申出人にとり利益のない結果となり,補助参加申出人に有利な影響を及ぼすものではない。

したがって,補助参加申出人と被告らとは主文における判断との関係において利害を共通にするという関係にはない。

3  補助参加申出人は,参加の理由として「判決理由中の判断についてのみ法律上の利害関係を有する場合であっても,補助参加人がその法的地位ないし法的利益を守るため被参加人を補助して主張立証の機会が与えられるべき場合には参加の利益が認められる」との考え方を前提とし,「本件訴訟において原告らは補助参加申出人の古和浦漁協に対する2億円の預託が違法である旨主張しているが,右2億円の預託は,補助参加申出人が定める正規の意思決定手続に従い行われた,補助参加申出人の会社としての意思決定に基づくものである。この意味で,原告らの主張は,補助参加申出人の会社としての意思決定が違法である旨の主張にほかならず,本件訴訟においては,補助参加申出人の会社としての意思決定の違法性の有無が重要な争点となり,補助参加申出人は本件訴訟の結果について法律上の利害関係を有する。」旨主張する。

当裁判所は,右主張の前提にある考え方自体を採用しないが,この点をおくとしても,本件では,補助参加申出人がその会社としての意思決定に基づき右2億円を支出したことが原告ら,古和浦漁協若しくはその他の第三者に対する関係で私法上又は公法上不当・違法であるのかを問うのではなく,被告らが補助参加申出人の取締役として行った右2億円の支出が補助参加申出人に対する関係において善管注意義務ないし忠実義務に違反する違法があるのかを問うものである。したがって,補助参加申出人の右主張は理由がない。なお,補助参加申出人の右主張は,会社の正規の意思決定手続に従い行われたものであるか否かにより補助参加の利益の有無が異なるというようにもうかがえる。しかしながら,取締役の特定の行為が会社の正規の意思決定手続に従い行われたものであるか否かは,実際上,区別が難しい場合があり,それ自体が訴訟上の争点になることもある。仮に補助参加申出人の右主張が右のような立論をするというものであれば,これを採用することはできない。

補助参加申出人が参加の利益として主張するその余の点も,補助参加申出人が被告らを補助するために本件訴訟に参加するための法律上の利害関係があるとは評価できない。

なお,補助参加申出人が,右2億円の支出に係る資料を保有ないし所持することそれ自体は,その参加の利益を基礎付けるものとはいえない。

4  以上によれば,補助参加申出人は本件訴訟において被告らを補助するために参加する利害関係を有するとはいえない。

三  よって,本件補助参加の申出は理由がないからこれを却下することとし,異議により生じた手続費用の負担について民訴法94条,89条を適用して,主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 稲田龍樹 裁判官 光本正俊 裁判官 上野正雄)

<以下省略>

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